韓国で広がるPDRNスキンケア:PDRNとは何か、エビデンスが示す範囲、信頼できる製品のつくり方
PDRNはK-ビューティーで最も注目度の高い成分の一つですが、そのエビデンスの多くはクリニックでの施術から得られたものです。PDRNとは何か、どのように調達されるのか、避けるべき訴求は何かを解説します。

目次
PDRNは、美容医療の注射治療に用いられる、クリニック向けの成分として最もよく知られています。PDRNスキンケアはK-ビューティーで最も注目を集めるトピックの一つとなり、その名を冠したセラム、クリーム、ミスト、マスクが韓国国外でも広く販売されています。
ブランドオーナーにとって、この人気はチャンスであると同時にリスクでもあります。PDRNを支える科学的知見の多くは、健康な肌に塗るクリームではなく、注射や創傷ケアから得られたものです。そして韓国の規制当局は、両者の境界を曖昧にする広告に対して、すでに措置を講じています。
本ガイドでは、PDRNとは何か、エビデンスがどこまでを示しているのか、そして裏付けのある訴求を備えたPDRN製品をどのようにつくるのかを解説します。
PDRNとは?PDRNとPNの違い
PDRN(ポリデオキシリボヌクレオチド)は、従来サケ(サーモン)の精子から抽出されてきたDNA断片の混合物で、そのため「サーモンDNA」として販売されることがよくあります。PN(ポリヌクレオチド)はサケやマスの生殖腺から得られる関連原料で、国際学術誌『Int J Mol Sci』に掲載されたレビューによると、PDRNより鎖が長く、分子量が大きいとされています。両者は互換的に使えるものではありません。
また、「PDRN」はマーケティング上の名称であり、全成分表示上の名称ではありません。INCIリストでは「Sodium DNA」と表示される場合があり、EUの化粧品成分インベントリ(CosIng)では、その機能が「皮膚コンディショニング」として登録されています。「Hydrolyzed Sodium DNA」や「Sodium DNA/RNA」といった関連する登録名もあるため、サプライヤーが使用している正確なINCI名を確認しましょう。
韓国でPDRNスキンケアが広がった理由
韓国では、クリニックでの施術で築かれたPDRNの評判が日常のスキンケアにも波及しており、需要の強さを示す兆候もはっきりと表れています。
- CJ Olive Youngによると、2025年8月~9月に開催されたOlive Youngのセールでは、PDRNの検索数が695%増加し、ペプチド(+72%)を大きく上回りました。
- 2026年10月時点で、Olive Youngのグローバルストアの「Top Orders」ランキングでは、スキンケア製品上位100品のうち十数品の製品名にPDRNが含まれていました。
- 2026年10月時点では、韓国ブランドのPDRNセラム、クリーム、マスクがAmazon USの「ビューティー&パーソナルケア」売れ筋ランキングにも入っていました。
これほど多くの製品が同じ4文字を掲げるなかで、真の差別化要因となるのは信頼性です。
エビデンスが示していること、示していないこと
皮膚の若返り、瘢痕予防、創傷治癒を目的としたPNおよびPDRNに関するランダム化臨床試験のシステマティックレビューでは、7件の試験(参加者は合計183人)が特定されました。最も一貫した効果が見られたのは創傷治癒で、著者らはサンプルサイズの小ささとプロトコルのばらつきを指摘しています。外用での使用は、傷のある皮膚や施術を受けた皮膚が対象で、植皮の採皮部へのPDRN軟膏の塗布と、マイクロニードリングと併用したPNまたはPDRNの塗布でした。そのほかの試験は、注射を用いたものか、褥瘡を治療対象としたものでした。
損傷のない肌に使うセラムやクリームについては、エビデンスはさらに限られます。Dermatology Times誌は、外用セラムを臨床データの基となった注射と同等とみなす訴求は裏付けられていないこと、PDRN断片の大きさは、これを超えると分子が単独では損傷のない皮膚をほとんど透過しなくなる約500ダルトンをはるかに上回ること、そして大半のブランドが自社のPDRNの分子量を開示していないことを指摘しています。
だからといって、PDRNクリームが否定されるわけではありません。クリニックでの結果は、あくまでクリニックのものだということです。外用製品は、注射の結果を借りるのではなく、保湿や肌の心地よさなど、最終製品のフォーミュラが実現するよう設計・試験された内容を軸にポジショニングしましょう。
サーモン由来PDRNと植物由来PDRN
PDRNの由来は、製品をどのようにポジショニングできるかを左右します。
- ヴィーガン訴求。サーモン由来のPDRNは動物由来の原料であるため、これを配合した製品はヴィーガンの基準を満たすことができません。たとえばThe Vegan Societyのトレードマークは、動物由来の成分とその誘導体を除外しています。
- 植物由来の代替原料。一部のサプライヤーは、植物由来のDNA断片原料を「ヴィーガンPDRN」として販売しています。研究はまだ初期段階にあります。アマチャヅル属(Gynostemma)のカルス由来原料に関する研究はin vitroで行われたものであり、Dermatology Times誌は、植物由来PDRNに関する小規模な臨床試験は1件にすぎず、市場に出回る大半の製品を代表するものではないと指摘しています。
- ハラール市場。ハラールに適合するかどうかは、使用する個々の原料と最終製品の認証によって決まるため、適合を前提とせず、証明書類を求めましょう。
植物由来とサーモン由来の原料は必ずしも同等とはいえないため、それぞれがどのようなデータに裏付けられているかを確認しましょう。
PDRN製品が指摘を受ける訴求表現
最大のリスクは、化粧品をクリニックでの施術のように思わせる表現です。
韓国。2026年7月に明らかになった韓国食品医薬品安全処(MFDS)のデータによると、PDRN関連の化粧品広告違反は、2023年の7件から、2024年には19件、2025年には39件へと増加し、2026年は上半期だけで41件に上りました。これら106件のうち76.4%は、消費者に化粧品を医薬品と誤認させるおそれのある表現に関するものでした。指摘された表現の中には、肌の「再生」も含まれていました。シワ改善の訴求は韓国の機能性化粧品(기능성화장품)制度の対象であり、最終製品についてMFDSの審査または報告が必要です。また、PDRNはMFDSが告示するシワ改善成分には含まれていません。
米国。米国食品医薬品局(FDA)は、製品が化粧品か医薬品かを、その意図された用途によって判断します。FDAは医薬品的な訴求の例として、細胞の再生や発毛の回復をうたうことを挙げています。
欧州連合(EU)。規則(EU)No 655/2013では、成分の特性に関する訴求は、最終製品がその特性を備えていない場合に、備えているかのように示唆してはならないとされています。
実務上は、「再生させる」「DNAを修復する」「治癒させる」「再構築する」といった表現や、注射または特定のクリニック施術との比較は避けましょう。PDRNは皮膚コンディショニング成分として説明し、効果は最終製品で試験された範囲にとどめ、表現は各市場の当局または薬事コンサルタントに確認してください。
ブランドオーナーのためのフォーミュレーション・チェックリスト
プライベートラベルのPDRNセラムを計画している場合も、カスタムフォーミュラを検討している場合も、まず次の点を確認しましょう。
- 原料の特定。INCI名、由来(サーモン、マス、植物のいずれか)、濃度、分子量の範囲、そしてサプライヤーの規格書を求めましょう。
- 剤形。アンプル、クリーム、ハイドロゲルマスクは、それぞれPDRNコンセプトへの適し方が異なります。たとえば、フォーミュレーションライブラリのローズPDRNレチノール ハイドロゲルマスクは、PDRNコンセプトをマスク形式で展開した例です。
- 安定性と防腐。アンプルなどの水性の剤形には、確かな防腐システム、安定性試験、そしてパッケージングとの適合性の確認が必要です。
- 市場ごとの訴求。最初にどの市場で販売するかを決め、その市場に向けて訴求表現、ラベル表示、試験を計画しましょう。
- 最終製品での試験。効能の訴求には製品レベルのエビデンスが必要です。サプライヤーの原料データだけでは十分ではありません。
よくあるご質問
PDRNはヴィーガンですか?
従来のPDRNはサーモン由来のため、ヴィーガンではありません。植物由来の代替原料もありますが、ヴィーガンとしての適合状況はサプライヤーに確認してください。
PDRNスキンケアはクリニックでの施術と同じですか?
いいえ。クリニックで使われるPDRNやPNは、注射で投与されるか、創傷ケアに用いられるものです。外用の化粧品を、施術の代わりになるものとして決して訴求しないでください。
PDRNが肌を「修復する」と訴求できますか?
避けたほうが安全です。再生に関する表現は、韓国で指摘されたPDRN広告の事例に含まれており、FDAも細胞の再生を医薬品的な訴求として挙げています。代わりに、試験で確認された化粧品としての効果を説明しましょう。
PDRNは頭皮用製品に使用できますか?
化粧品としての頭皮のコンディショニングを目的としたスカルプケアのフォーミュラには配合できますが、発毛や抜け毛に関する訴求はできません。米国では、核酸は、OTC医薬品の発毛剤や抜け毛予防製品として、一般に安全かつ有効とは認められていない成分に挙げられています。韓国では、脱毛症状の緩和は機能性化粧品の訴求にあたり、MFDSの審査または報告が必要です。最新のルールは、各市場の規制当局に確認してください。
まとめ
ブランドがクリニックの科学と化粧品としての効果を切り分け、ボトルの中にどの原料が入っているかを正確に把握し、市場ごとに訴求を計画すれば、PDRNは信頼できる製品の軸となり得ます。PDRNは、クリニックの結果への近道としてではなく、誠実なフォーミュレーションと試験に裏付けられたポジショニングのストーリーとして扱いましょう。
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