広がるNAD+スキンケアとNMN:科学が裏付ける範囲と、製品のポジショニング方法
NAD+とNMNは、サプリメントからスキンケアへと広がりつつあります。科学が裏付けている範囲、ナイアシンアミドが重要な理由、そしてNAD+スキンケアの訴求を化粧品の範囲にとどめる方法を解説します。

目次
NAD+スキンケアは、サプリメントの話題から店頭の棚へと活躍の場を移しました。2026年10月時点で、Amazon USのフェイシャルスキンケア売れ筋ランキングの上位100品には韓国ブランドのNAD+セラムが2品入り、Olive Youngのグローバルストアのスキンケア「Top Orders」ランキングの上位100品には、製品名にNADを含む韓国ブランドのエッセンスとトナーが入っていました。
バイヤーが知りたいのは、その科学が本物かどうかです。率直に言えば、NAD+の背景にある生物学的知見は確かなものですが、NAD+とNMNの外用に関するエビデンスはまだ初期段階にあります。関連成分であるナイアシンアミドには、はるかに多くの皮膚研究の蓄積があります。
本ガイドでは、研究が何を示しているのか、そして化粧品の範囲にとどまる訴求で、信頼できるプレミアムなヘルシーエイジング製品をどのようにつくるのかを解説します。
NAD+とNMNをわかりやすく解説
NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)は、細胞のエネルギー代謝に関わる補酵素です。内分泌学の学術誌『Endocrine Reviews』に掲載されたレビューによると、NAD+レベルは生涯を通じて低下していきます。また、別のレビューでは、ヒトの皮膚のNAD+も加齢とともに減少すると考えられていると指摘されています。
NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)は前駆体、つまり体がNAD+をつくるために使う構成要素です。ナイアシンアミド(ニコチンアミド、ビタミンB3の一種)も同じファミリーに属し、処方開発者にとって最もなじみのある成分です。
NAD+とNMNが注目を集める理由
NAD+のストーリーは、スキンケアではなく、サプリメントと老化生物学の研究から始まりました。『Endocrine Reviews』誌の著者らによると、モデル生物では、前駆体によってNAD+を増やすことで、代謝や加齢に関連する多くの指標が改善しています。初期のヒト試験では、経口の前駆体によって血液や一部の組織のNAD+を安全に増やせることが示されていますが、前駆体の作用の仕組みはまだ十分には解明されていません。NMNについては、栄養学の学術誌『Advances in Nutrition』に掲載されたレビューによると、エビデンスの大半は細胞モデルや動物モデルから得られたもので、当時は約12件のヒト試験が進行中でした。
スキンケアがその後に続きました。韓国では、Olive Youngが、2024年に「スローエイジング」製品の売上が前年比60%以上増加したと報告しています。NAD+の知名度はマーケティングの助けになりますが、サプリメントの研究結果をクリームに流用することはできません。
NAD+スキンケアの外用エビデンス:わかっていることと、その限界
NAD+とNMNの外用に関する研究は、現時点ではその大半がラボでの研究です。
- 人工膜でのNMN。化粧品皮膚科学の国際学術誌『Journal of Cosmetic Dermatology』に掲載された研究では、酵母発酵ろ液に含まれるNMNが人工皮膚膜を透過し、培養線維芽細胞でI型コラーゲンの産生を増加させました。この研究では、原料をヒトで試験していません。
- 皮膚細胞でのNAD+。化粧品業界の研究者によるin vitro研究では、NAD+が、紫外線に関連する老化と内因性の老化の指標から培養ヒト線維芽細胞を守るのに役立ちました。
- 皮膚に届いた前駆体。光ダメージを受けた肌を対象とした研究では、外用のナイアシン誘導体(ニコチン酸ミリスチル)が皮膚細胞のNADを25%増加させ、プラセボと比べてバリア機能の指標を改善しました。これは別の分子ですが、肌に塗布した前駆体が皮膚のNADを増やし得ることを示唆しています。
これらの研究のいずれも、外用のNAD+やNMNがヒトの皮膚のNAD+を増やすことや、肌の見た目を目に見えて変えることを示してはいません。また、NAD+前駆体に関するヒトでのエビデンスは、その大半が経口摂取によるものです。そのため、「肌のNAD+レベルを高める」は避けるべき訴求です。
ナイアシンアミド:研究が進んだNAD+ファミリーの成分
外用のエビデンスが最も充実しているのはナイアシンアミドです。学術誌『Antioxidants』に掲載されたレビューは、ナイアシンアミドが細胞内のNAD+プールの回復に役立つことを指摘し、外用のナイアシンアミドは忍容性が高く、臨床試験で肌の老化と色素沈着の進行を抑えたと述べています。
たとえば、12週間の二重盲検・半顔比較試験では、50人の女性が顔の片側に5%のナイアシンアミドを、もう片側にナイアシンアミドを含まない基剤を塗布しました。ナイアシンアミドを塗布した側では、小ジワやシワ、シミ、赤みのムラ、くすみの見た目が改善し、弾力の測定値も向上しました。
ただし、注意点が2つあります。成分の研究が裏付けるのは成分そのものであり、お客様の製品ではありません。そのため、訴求には最終フォーミュラでのエビデンスが必要です。また韓国では、2~5%のナイアシンアミドは、ブライトニング(ホワイトニング)の機能性化粧品(기능성화장품)カテゴリーの告示成分であり、このカテゴリーでは最終製品について韓国食品医薬品安全処(MFDS)の審査または報告が必要です。このルートによらない場合は、ブライトニング効果をうたうのではなく、ナイアシンアミドを成分として示すにとどめましょう。
プレミアムなヘルシーエイジング・コンセプトのつくり方
信頼できるNAD+製品は、ほかのプレミアムなフォーミュラと同じようにつくられます。次のポイントを押さえましょう。
- トレンドとエビデンスを組み合わせる。NMNやNAD+に、ナイアシンアミドや、ペプチドなどのサポート成分を組み合わせることを検討し、研究が初期段階にある1つの成分だけにフォーミュラを頼らないようにしましょう。
- 剤形を選ぶ。セラムやアンプルは濃縮感のあるストーリーに適しており、クリームやジェルクリームはデイリーケアのメッセージを伝えるのに向いています。Hansolbioのフォーミュレーションライブラリにあるシルキーバリアクリームは、半透明のジェルクリームの剤形の一例です。
- 安定性を見据えて計画する。『Journal of Cosmetic Dermatology』誌の研究では、ろ液中のNMNは時間の経過とともにゆっくりと分解し、20℃での半減期は約7か月でした。安定性試験とパッケージングとの適合性確認を行い、最終製品が使用期限まで品質を保てることを確かめましょう。
- 原料を確認する。NAD+やNMNの原料については、INCI名、由来、濃度、サプライヤーの規格書を求めましょう。
- 訴求する内容を試験で確認する。「見た目がよりなめらかに」「よりツヤのある印象に」といった訴求は、最終製品での試験によって裏付ける必要があります。
市場別に見る、避けるべき訴求表現
最大のリスクは、医療的に聞こえる表現です。どの市場でも、「老化を逆転させる」「長寿」「細胞の若返り」「DNAを修復する」「ミトコンドリアを再充電する」といった表現や、サプリメントや点滴との比較は避けましょう。
韓国。アンチエイジングの訴求に最も近い機能性化粧品の類型は、シワ改善です。MFDSはシワ改善の成分として4種類(レチノール、パルミチン酸レチノール、アデノシン、ポリエトキシル化レチナミド)を告示しており、それ以外の成分をベースとした製品には、安全性と有効性のデータについてMFDSの審査が必要です。NAD+とNMNは、この告示成分のリストには含まれていません。
米国。米国食品医薬品局(FDA)は、製品が化粧品か医薬品かを、その意図された用途によって判断します。FDAは、製品が医薬品とみなされる訴求の例として、細胞を再生させる訴求や、メラニンの生成に影響を与える訴求を挙げています。
欧州連合(EU)。規則(EU)No 655/2013では、成分の特性に関する訴求は、最終製品がその特性を備えていない場合に、備えているかのように示唆してはならないとされています。たとえば、パッケージ上で細胞のエネルギー代謝におけるNAD+の役割を説明すると、クリームにも同じ働きがあるかのように示唆するおそれがあります。
日本。化粧品の効能に関する訴求は、公式に定められた56項目の効能表現の範囲内にとどめる必要があります。
ルールは変わることがあるため、表現はターゲットとする各市場の当局または薬事コンサルタントに確認してください。
よくあるご質問
NAD+とNMNの違いは何ですか?
NAD+は細胞のエネルギー代謝に関わる補酵素です。NMNは、体がNAD+をつくるために使う前駆体です。ナイアシンアミドも前駆体の一つで、外用に関する研究がはるかに多く蓄積されています。
外用のNAD+は肌のNAD+を増やしますか?
本記事で取り上げた研究では、そのような結果は示されていません。取り上げたNAD+とNMNの研究は、いずれもラボでの研究です。別のナイアシン誘導体は臨床研究で皮膚のNADを増加させましたが、ある分子の結果を別の分子に当てはめることはできません。
NAD+製品を「アンチエイジング」とうたえますか?
市場によって異なります。韓国では、シワ改善の訴求は機能性化粧品の訴求にあたり、最終製品についてMFDSの審査または報告が必要です。その他の市場では、アンチエイジング全般をうたうよりも、肌の見た目や使用感について試験で確認した訴求を伴う「ヘルシーエイジング」のポジショニングのほうが、根拠を示しやすくなります。
まとめ
NAD+には確かな生物学的根拠があり、消費者にも実際に認知されていますが、NAD+とNMNの外用エビデンスはまだ初期段階です。トレンドをナイアシンアミドのような研究が進んだ成分と組み合わせ、最終フォーミュラを試験し、訴求を化粧品の範囲にとどめるブランドは、ターゲット市場で通用するプレミアムな製品をつくることができます。
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HansolbioのR&Dチームは、NAD+、NMN、ペプチド、ナイアシンアミドをはじめとする先進成分やトレンド成分を、お客様がターゲットとする訴求と市場に合わせて活用しています。
カスタムフォーミュラは、お客様が希望する成分、テクスチャー、訴求、ターゲット市場に合わせて設計されます。当社の社内品質管理(QC)には安定性試験が含まれており、必要に応じて、製品の訴求を裏付けるための効能評価試験や臨床試験をフォーミュレーションに実施することも可能です。


